SEIKO

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マイクロアーティスト工房 組立師 中澤 義房
叡智II Cal.7R14(作業工程)

磨き

セイコーエプソン塩尻事業所の精密加工職場で高精度に製作された各パーツを、マイクロアーティスト工房で磨き上げます。とりわけムーブメントの「受け」のコーナーやルビーの軸受け周りの面取り部では、回り込んだ部分が光を受けたときの輝きが、歪み無く、金属の美しさをそのまま表現します。こうした美しい仕上げは、繊細にそして丁寧に磨きあげることを可能とする熟練の技によって再現されています。また、ルビーの軸受けから見えるほぞの頂点なども同様に磨き上げられます。様々な太さのほぞの頂点を美しく輝かせるには高い技術力が必要です。

磁器ダイヤルの焼成

マイクロアーティスト工房と同じ長野県にある磁器メーカーの工場で、磁器ダイヤルの素材となる基板が製造され、グレーズ(釉薬)が着いた状態で納品されます。酸化アルミほぼ100%の素材で、従来の磁器文字板と比べて、強度と白さが格段に向上しています。納品後のパーツは、マイクロアーティスト工房にて絵つけ・焼成が行われます。同社のすぐれたノウハウとのコラボレーションにより、より高品質で独創的な柔らかい風合いを演出します。

また、叡智では直径35mmだった時計のサイズも叡智IIでは直径39mmとより存在感が大きなものへ変更されています。それに伴いダイヤルも大きく見やすいものになっています。

ロゴ、インデックスの手書き

磁器ダイヤル独特のぬくもりと美しさを更に演出する、ロゴやインデックスは、優れた技術者の手作業によって塗り分けられます。担当するマイクロアーティスト工房の絵付師は、食器の加工や工業機材、セラミックス事業などで著名な国内陶磁器メーカーにて3年の研修を受けています。着色に使う絵の具の配合、扱う筆に至るまで吟味し尽くされたこの工程は、1日で一つしか生産できないほどの高い集中力と技術力が必要です。

青焼き

時針、分針、秒針はブルーに彩られ、独特の風合いを表現しています。これらはテンパー針と呼ばれ、約20工程を経て、表面を鏡面仕上げされた各パーツを焼き上げることで、この色調を再現します。熱を入れた際、温度が上昇することで金属の表面は茶色から青へと変わります。独特の青にパーツが包まれた一瞬を見切り、針を取り上げる作業は熟練の技能が必要です。気温や湿度の影響で色も変わってしまうこの工程は、自然現象を活かすことで他に類を見ない「ブルー」が生まれるのです。さらに叡智Ⅱでは、受けを止めるねじもこの青焼きを施しています。

※写真は叡智IIの針ではありません。

組立

パーツの組立は、中澤の手によって行われます。すでに高い精度と美しさを備えた各パーツは、マイクロアーティスト工房が定めた手順によって、手際よく組まれていきます。一見、簡単そうにも見えるこの作業は、無駄や複雑さが一切無い成熟された高度な技術力によってこそ成しえる、究極のシンプルさが感じられます。中澤の手によって組み込まれたパーツは、不滅の輝きを持った高精度な製品として命を吹き込まれます。

ケーシング

叡智IIでは、パワーリザーブを裏面に配置するように変更したので、ダイヤルはすっきりと見やすく、シンプルな仕上がりになっています。また、「受け」の形状も見直し、2008年に発売された「叡智」では3分割だった受けの割り方を2枚へ変更。1枚にパワーリザーブ、もう1枚にブランドロゴの刻印をバランス良く配置しました。さらにケースサイズを4mm広げ、ダイナミックさを演出しています。

時計工具

各スタッフが厳選し、自分が使いやすいようにカスタマイズした工具は、匠の技を表現するために必須のアイテムです。例えば磨きに使う「ジャンシャン」(リンドウ科の高山植物)は、適度な柔らかさを持ち、パーツを磨く際に研磨剤を保持して対象面を均一に磨きあげる特長があります。最適な長さにカットされて使われますが、スイスから取り寄せる以外、入手が難しいとされていました。しかし、マイクロアーティスト工房で調査した結果、北海道の医療大学で薬品として栽培されていることが判明。取り寄せることにも成功しています。

また、ロゴやインデックスを書く際に利用している筆は、化粧筆でも有名な広島県の筆メーカーの製品を使っています。担当の小口氏自らが同社へ赴き、選定に選定を重ねて選び抜かれた名筆です。