ものづくりへの熱い思いが
前へ進む力になる
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2010年入社(中途)/国際研究学専攻修了
2022年入社/美術工芸研究科工芸専攻修了
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唯一無二の衝撃
──セイコーウオッチを選んだ理由について教えてください。
A.S. 私の場合、『クレドール』の『FUGAKU』を目にした時の衝撃が一番の入社動機でした。
私は学生時代、美大で日本の伝統工芸技法を学びながら作品制作に取り組んでいたのですが、作って売ることの難しさを日々感じていました。そんな中で工芸品のリサーチをした際に出会ったのが『FUGAKU』だったのです。日本の工芸の各分野の最高峰を集め、腕時計という機能あるものの中に落とし込むことに成功しており、一目見て「ものとしての凄み」が伝わりました。それが適切な価格で販売され、実際に購入されていることにも衝撃を受け「日本のものづくりはまだまだ世界に進出していける」ことに興奮したのを覚えています。
S.N. 実は『FUGAKU』は私が初めて推進を担当した企画です。私にとって大きな挑戦であり成長するきっかけとなった非常に思い入れのあるモデルです。
A.S. そうですよね。二年目から私はS.N.さんの『グランドセイコー』と『クレドール』を担当するチームに加わりましたが、その話を聞いた時、ご縁を感じました。S.N.さんの入社動機をお聞かせいただけますか?
S.N. 私は学生時代をアメリカで過ごすうちに、ナショナル・アイデンティティへの意識が高まっていきました。その課程で、日本製品のプレゼンスの高さを目の当たりにし、自国のものづくりに対して誇りを感じるようになりました。日本のものづくりが持つ強みを土台に、グローバルなビジネスシーンに携わりたいと思い、世界中に販売網を持つセイコーウオッチに入社しました。
A.S. 国内・海外からそれぞれセイコーのものづくりを見て、その魅力に惹かれたと言えますね。
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商品づくりの羅針盤として
──お仕事の内容を教えてください。
A.S. ものづくりに携わる方々が行き先を迷わないよう、道案内をする部署ですね。主に新製品の「製造のQCD」と言われる品質・コスト・日程を管理しています。私は『クレドール』を担当しています。
S.N. 新商品の企画発足から完成、出荷までの一連のものづくりのプロセスを統括するのが企画推進部です。ものづくりに関わる社内の開発部門、設計部門、デザイン部門や、社外のサプライヤーや職人さんに、いつ、何をすべきかを指し示したり、製造コストの最適化を追求したりすることが主な役割です。私は『グランドセイコー』、『クレドール』の全ての新商品の開発を進捗管理しながら、ブランドを横断したQCDの課題に取り組んでいます。
A.S. ものづくりの現場に深く入り込んでいくことも珍しくありません。私は学生時代に学んだことや入社してから経験したことなどを踏まえ、現場の方々とコミュニケーションをとることを意識しています。
S.N. 『FUGAKU』の開発時は、デザイナーが思い描く漆の色や質感がなかなか再現できず、半年間にわたり、日々の電話や訪問を重ね、漆芸の先生と試行錯誤しながら進めました。試作は小さなものも含めると100回以上行いました。
A.S. S.N.さんが企画推進部に異動して最初に担当されたのが『FUGAKU』だったそうですが、会社にとっても大きなチャレンジだったでしょうね。
S.N. そう思います。経験や知識も大切ですが、意欲ある人材に責任ある仕事を大胆に任せることは、当社の素晴らしいカルチャーだと思います。
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自ら育つ力を大切に
──仕事の上でのお2人の関係について教えてください。
A.S. S.N.さんには業務の相談は勿論、個人的な趣味や世間話等、常にコミュニケーションを取らせていただいています。業務に関してはまずは自主的に考え動いてみて、何か課題があれば報告・相談し、アイデアやサポートをいただく。次からは自分で考えて行動する・・というサイクルにしていただいているので、日々成長の機会を与えていただいているなと感じます。
S.N. A.S.さんにはまずは自分の考えを実践してもらうようにしています。そうすると、必ず自分なりの発想や工夫で応えてくれます。
A.S. 物事をただマニュアル通りに進めることは誰にでもできますが、関係者の負担の軽減のための工夫や気遣い、商品性を上げるための交渉は、その人の経験や人間力がモノを言うなと日々実感しています。企画推進部の皆さんはそれぞれ独自のスタイルをお持ちなので、日々先輩方の考え方や行動を拝見しながら、自分のスタイルに吸収するよう意識しています。
S.N. セイコーの強みは、個人の役割分担が明瞭であり、各自のやり方が尊重される点だと思います。それでいて、チームとしての一体感もあるので、困った時にはチームでサポートする体制が整っています。安心して挑戦ができる環境だと思います。
A.S. 挑戦という観点では、自主的に行った工場見学についてレポートにまとめたところ、S.N.さんが経営陣に向けてプレゼンテーションする機会をつくってくれたことがありました。
S.N. レポートを読んで、私には気づかなかった視点でものづくりを捉えていると思ったので、経営陣にプレゼンテーションすることが新しい商品開発につながるかもしれないと思ったのです。
A.S. ありがとうございます。プレゼンテーションでは経営陣が真剣に一社員の意見に耳を傾けてくださることに感動しました。これからも日本のものづくりに敬意を示しつつ、その魅力を発信・提案していきます。
S.N. 私たちの仕事では、日々の取り組みや工夫が腕時計という形として可視化される瞬間が大きなやりがいとなります。A.S.さんのように日本のものづくりをリスペクトしながら新しい角度でものづくりにチャレンジしたいという方と是非一緒に、世の中に誇れる商品を送り出していきたいですね。
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1913年、セイコーが開発した初の国産腕時計が『ローレル』。『FUGAKU』の開発が難航し余裕を失っていた時に、先輩デザイナーから譲り受けたのが、この復刻モデルでした。『ローレル』も先人たちが多くの困難を乗り越えて完成させた時計です。その魂を受け継いで頑張れという、先輩のメッセージが込められた時計です。
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私の地元の兵庫県に工房のあるジュエリーブランド〈Gimel〉とのコラボレーションモデルです。素晴らしい石のクオリティと細部にまで神経が行き届いたセッティングを見るたび、クレドールブランドとギメルブランドのコラボだからこそ出せた魅力があると感じます。