“史上最高性能”を更新し続ける特別な腕時計。「セイコー アストロン」の現在地

1969年、「クオーツ アストロン」が世界初のクオーツ腕時計として鮮烈なデビューを飾った。2012年には世界初のGPSソーラー機能を備えた傑作が誕生。それは“アストロン”と名付けられ、セイコーの先進性を象徴するブランドとなった。そして今年、さらなる進化を遂げた史上最高性能のアストロンが登場する!

セイコー アストロン「SBXC151」 /ケースサイズ 43.3mm、厚さ13.4mm、純チタンケース、キャリバー5X83、ソーラーG PS電波修正、平均月差±15秒(非受信時)、フル充電時約6カ月間連続駆動(パワーセーブ時約2年)、ワンプッシュ三つ折れ方式、10気圧防水

■「アストロン」進化の系譜

▲セイコーウオッチ 商品企画二部 部長 古城滋人/20年以上にわたり、セイコーのさまざまな腕時計の企画・開発に携わる古城氏。2012年モデルの「アストロン」についても、企画段階から関わる

「腕時計に何を求めるか」という問いに対し、“精度”は重要な指標のひとつだ。なぜなら、多くの時計ブランドは「1秒」の精度を追求するために、膨大な費用と時間をかけているから。時計における精度とは、いわば時計ブランドの力量そのものが試される領域なのだ。

1969年、一本の腕時計が時計の歴史を変えた。各社が機械式の精度を巡ってしのぎを削る中、セイコーは水晶振動子(クオーツ)を用いた全く新しいムーブメントを開発。日差にして0.2秒という驚異的な精度を誇る腕時計「クオーツ アストロン35SQ」が誕生した。

【1969年】世界初のクオーツ腕時計 「35SQ」が誕生

各社が腕時計の精度を 競い合う中、月差±5 秒、日差にして0.2秒(機械式は平均して日 差 20 秒)という超高精精度を実現。時計の常識を覆す出来事として今なお語り継がれている。

■高精度腕時計の象徴。「セイコー アストロン」誕生秘話

▲2012年にデビューしたアストロン「SAST003」をつける古城氏。47mmのケース径を感じさせないスタイリッシュなデザインだ

時代は変わり、1990年代後半。セイコーはさらなる精度を求めて 技術を応用した腕時計の開発に着手するものの、当時の技術力では夢のまた夢、という状態だった。しかし、諦めることなく、携帯電話やナビゲーション機器の開発で着実に実績を積み上げた結果、2006年には、 ソーラーウオッチの開発プロジェクトが正式に持ち上がる。いわば「第二のアストロン」誕生へと繋がる本プロジェクトに携わっていた古城氏に、当時を振り返ってもらった。

「“グローバル化”というのはひとつ大きなキーワードでしたね。当時、世界を飛び回るような働き方が活発化していたことに加え、セイコーとしても、グローバル化を推し進めるうえで“世界中のどこにいても時間がわかる”ような、ある種分かりやすい機能を備えた腕時計の開発は急務でした」

▲「スペックをひけらかすのではなく、あくまでユーザーに寄り添った“本質的なモノの良さ”を追求するのが アストロンです」(古城)

とはいえ、名だたる時計ブランドが成し得ていない領域ゆえ、開発は困難を極める。「特にGPS受信の低消費電力化と受信性能の確保には非常に苦労しました。最終的には、時刻取得に特化したGPSモジュールを新たに開発して消費電力を最小限に抑え、受信性能についても、アンテナをリング状にしてベゼル部分にあしらい、感度を高めることで解決しました」

そして2012年、ついに世界初のGPSソーラーウオッチ「セイコーアストロン」が誕生した。「世界中のどこにいても正確な現在地時刻を取得できて、止まることもない。つまるところ、アストロンは究極の“ストレスフリーウオッチ”ともいえるんです」

【2012年】アストロンの名を継ぐ世界初のGPSソーラー時計

地球上のどこにいても常に正確な時刻を示す“GPS測位”と、電池切れの心配のない“光発電”をかけ合わせ た、世界でも類を見ない「GPSソーラーウオッチ」が誕生した。

【2014年】技術革新により小型化に成功。操作性も向上した第二世代機

第二世代に突入したアストロンは、新たにクロノグラフ(ストップウオッチ機能)を搭載し、さらに、ウオッチヘッド部においては約30%もの劇的なダウンサイジングに成功した。

【2018年】最短3秒で時刻情報を取得。新キャリバー5X53を開発

外装デザインやサイズ等はさらにマッシュアップを施しつつ、受信性能に関わるすべてのパーツを新たに開発。時刻情報を約3秒で取得するという圧倒的なスピードを実現した。

■彼らが目指す先進性とは?「セイコー アストロン」進化論

今年、さらなる進化を遂げたアストロン ネクスター デュアルタイム・クロノグラフが登場する。そこで、長年アストロンを見続けている古城氏と新モデルをデザインした伊東氏をアサインし、本作の注目すべきポイントやこだわりを心ゆくまで語ってもらった。

▲新キャリバー「5X83」がもたらす“史上最高性能”への進化

新型モデルを語るうえで欠かせないのが、アストロン初となるデュアルタイム・クロノグラフを搭載した新型キャリバーの存在だ。「キャリバーは設計との対話を重ねながら、徐々に仕様を決めていきました」そう語るのは、ウオッチデザインを担当する伊東氏。

▲デザイン事務所や情報機器メーカーでのプロダクトデザインを経て、2018年セイコーウオッチに入社。現在はアストロンをはじめとする数々のウオッチデザインを担当している

「本モデルに搭載されたキャリバー5X83は、二つの異なるタイムゾーンの時刻を同時に表示するデュアルタイム表示機能に加えて、1/20秒のストップウオッチ機能を追加。いつ・どこにいても正確な時を刻んできたこれまでのアストロンから、自分でクロノグラフを操作することでより能動的かつアクティブな使い方ができるようになりました。未来を切り拓く次世代のリーダーをイメージするネクスターシリーズとしてもぴったりな機能だと思います」

また、古城氏は新キャリバーをこう評価している。「中央の基本時計で示す時刻の時分針と、サブダイヤルで示す第二の時刻の時分針が同時駆動できるようになったことで、ローカルタイムとホームタイムの切り替えにかかる操作時間を大幅に短縮化することに成功しました。これは、海外への移動が活発化している今まさに必要とされている機能。ベストなタイミングで出せるのは、しっかりと未来を見据えている証拠です」

▲技術革新により自由度が増したデザインの“最適解”

新キャリバーが体現しているように、セイコーが誇る開発力や技術力は日々進化している。そうした技術革新は、本モデルのデザインにも随所に反映されていると伊東氏は語る。

▲伊東氏が描いた「SBXC151」のデザインスケッチ。これを基に、3Dプリンターを用いた検証や試作機の製作が行われる

「GPSの受信性能やソーラーの充電効率等の技術面は年々上がっているので、その分デザインに融通をきかせられるようになりました。その象徴として挙げられるのが、1/20秒クロノグラフを12時位置に配置した“縦三つ目ダイヤル”です」

▲「3Dプリンタで原寸モックを出力して、ディテールや着用感を確認することで想像とのギャップを埋めています」(伊東)

「これは、受信アンテナの性能が上がり、さらに小型化したことで実現できたもの。ちなみに、縦三つ目デザインはアストロンとしては初の試み。ゆえに、ダイヤルには縦の流れを意識したストライプ模様をあしらい、躍動感溢れるデザインに仕上げています。そのほか、充電効率が向上したことで、ダイヤルの発色や質感が劇的に向上。腕時計を選ぶうえで少なからず求められる、クラス感や高級感といった点においても、新モデルはさらに自信をもっておすすめできます」

▲現代にこそ相応しい究極のストレスフリーウオッチ

3年のコロナ禍を経て、ライフスタイルは一変。多様化の一途を辿っている。そんな時代だからこそ、アストロンをおすすめしたいと古城氏は語る。

「アストロンはビジネスウオッチという位置付けではありますが、今や出社する人、テレワークの人、それらをミックスする人など、働き方は多岐にわたります。それに伴い服装もカジュアル化し、オンとオフの境目がより曖昧になりました。アストロンは、どんなスタイルや服装とも合わせやすいですし、スーパースマートセンサーによる自動時刻受信で時間は常に正確。おまけに素材は軽くて疲れにくいチタン製。〝究極のストレスフリーウオッチ〞は、時代が変わった今なお健在です」

▲カラーバリエーションのひとつ「SBXC153」を手に取る伊東氏。「素材はチタンを使用しているので、軽量かつ快適な着用感です」

▲左から: 「SBXC155」「SBXC151」「SBXC153」

古城氏のコメントに、伊東氏も続く。「まさしく、今回のモデルは仕事や趣味を全力で頑張っている人に選んでいただけるような腕時計を目指しました。カラーも3色と豊富ですので、ぜひ好みのアストロンを見つけてください!」

GoodsPress7月号より転載

>> セイコー アストロン
問い合わせ/セイコーウオッチ株式会社 お客様相談室 0120-061-012
<取材・文/若澤創 写真/江藤義典>