vol.2
Trip to
text by TRANSIT photo by DAISUKE HAMADA
白夜の北欧。まずはヘルシンキへ。
アイスランド号の撮影のために、フィンランドを経由してレイキャヴィクに向かった。東京から約10時間半。その日の夕方にヘルシンキに到着した。明朝にはアイスランドへ発つ予定。フライトを選べばその日のうちにアイスランドに着くこともできたのだけれど、せっかくだから夏のヘルシンキも見てみたくて、ちょっとしたおまけのような気持ちで1泊、トランジットすることにしたのだ。小さな街だしトラムもあるし、少し歩くだけでも楽しいだろうと。
空港からエアポートバスできっかり30分。ヘルシンキ中央駅に着いたのは16時だ。明日の朝は早いし取材もあるからあまり夜遅くまで遊べないけれど、それでも今は北欧の夏。時間はたっぷりあるように思えた。はたしてそれは正解で、マーケットや大聖堂を見て、カフェでお茶をしたり石の教会まで足を伸ばしていたらあっという間に腕時計は21時前を告げていた。なんとなく、街の人たちが浮き立っているように見えるのが微笑ましい。これが北欧の白夜というものか。時計がないと時間を忘れてしまう。そろそろ眠りに就かないと。
アイスランド、北極圏近くの街まで。
アイスランドの玄関口、ケフラヴィーク空港。<Seiko Astron>で現地時刻に調整する。フィンランドとの時差は3時間。針は3時間巻き戻った。ちょっと得したような気分だ。
車を借りて、レイキャヴィクまで。小さなカフェでもハッスルグリムス教会でも、 “世界一美味しい”と評判のホットドッグ屋でも、スペイン語にフランス語、その他聞きなれない言語が前から後ろから聞こえてくる。今、アイスランドは世界の中で最も魅惑的なデスティネーションのひとつなのだ。そのことは旅の間中、ずっと感じたことだった。理由はもちろん、他では見られない魅惑的な風景の数々にある。今回の旅の目的地は、氷河のある南ではなく、北にある第二の都市アークレイリ。国道1号線をひた走り、ときたま現れるガソリンスタンドに寄り、しばしば目を奪われるような絶景を撮影しながら走った。取材を快諾してくれた馬農家の家族の家へ向かう。北の果てで、人びとはどんな暮らしをしているのだろう? 迎えてくれた少女とその家族は、美しいアイスランドホース100頭と暮らしていた。馬を愛してやまないその笑顔に心を打たれる。手元の時計は17 時を指している。太陽はまだまだ高い。