装う時計 美の探求レディスウオッチ
時計は時を伝える道具である一方、装飾品としての側面もあります。セイコーは早くから女性のためにリングウオッチやペンダントウオッチなど装飾性の高い時計を提供していました。もちろん腕時計においても同様です。セイコーのアーカイブモデルには現代においても新鮮な印象を受けるレディスウオッチが多く残されています。
たとえば1964年に登場した「ホワイト」。当時は革ストラップが主流だったため、ケース、ダイヤル、ブレスレットをホワイト(シルバー色)でまとめたこのモデルは、繊細なデザインとあいまって多くの人に愛されました。
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WHITE
ホワイト
ケース、ダイヤル、ブレスレットを統一感あるホワイト(シルバー色)でまとめたデザイン。特にアーモンド型のケースは日本と英国で人気を獲得。繊細なケースデザインも特徴です。
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LASSALE
ラサール
高級ラインの「ラサール」は、海外での人気を受けて日本でも販売。ブレスレット部分の色つきミネラルガラスには、複雑なカットが施されています。写真は1984年の女性用モデル。
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TISSE
ティセ
アクセサリー感覚で着ける時計の進化版。極小ムーブメントの開発により、さらに繊細なフォルムを実現。ジャストではなくルーズフィットという着用スタイルを生み出しました。
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NOIE
ノイエ
ケースの柔らかな丸みが優美な「ノイエ」。オリジナルフォントのアラビア数字や鮮やかなレザーストラップなど、随所にこだわりのあるデザインによって人気を博しました。
1980年代に入ると、極小のクオーツムーブメントの恩恵で、繊細でアクセサリー感覚の時計が続々登場します。カラーガラスを使ったブレスレットが特徴の「ラサール」や、ルーズフィットという着用スタイルを提案した「ティセ」は、その好例です。さらにこの年代ではモード系ファッションが台頭。より個性的かつ大胆なデザインが求められるなか、セイコーは左右非対称の「リボリ」を打ち出し、欧州で多くのファンを獲得しました。
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RIVOLI
リボリ
ファッションの多様化が進んだ1980年代に生まれた「リボリ」。パリの“リボリ通り”からその名を取ったシリーズです。非対称ながらバランスの取れたデザインに注目が集まりました。
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LUKIA
ルキア
自分らしく生きるための実用ウオッチのパイオニアとして誕生した「ルキア」。たしかなテクノロジーと上質なデザインで、美しく生きる女性と共に歩んできました。
そして、1995年になると、いよいよ「ルキア」が登場。フェミニンな要素を持ちながら、上質なデザインと高い機能性を備えたこのモデルは、以後、社会で活躍する女性たちの定番実用ウオッチとなっていくのです。
ライフスタイルやファッションのトレンドの変化を見極めながら、セイコーはこれからも多様な美意識に寄り添う時計を追求し続けていきます。
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VIVACE
ヴィヴァーチェ
“生き生きした”を意味するイタリア語に由来する「ヴィヴァーチェ」。20~30代の活動的な女性をターゲットとし、海外を中心に展開したシリーズです。初代モデルは独特の丸みが特徴。
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SEIKO M
セイコー M
女性を冒険へと誘う、スタイリッシュスポーティーウオッチ「セイコー M」。大人の女性のための、ファッション性と堅牢性を兼ね備えたレディスウオッチです。
侘び寂びの「美」。
日本の伝統工芸を
日常に
日本の伝統工芸を代表する名工の技とセイコーの技術を融合させることで、美しいドレスウオッチや、華やかな高級腕時計などを発表してきたセイコー。その中で1913年にセイコーが世に送り出した国産初の腕時計「ローレル」に採用された琺瑯(ほうろう)ダイヤルは今なお色褪せず、その美しさは現代のモデルでも愛されています。メイドインジャパンの誇りを持ち、伝統技法を駆使して作られたダイヤルが特徴のセイコー プレザージュ クラフツマンシップシリーズ。このシリーズには漆ダイヤル、そして有田焼ダイヤルや七宝ダイヤルを採用した腕時計もラインアップされています。
ローレル誕生110周年となる2023年に、クラフツマンシップシリーズから4本の限定モデルが登場しました。ローマ数字とバーインデックスを交互に配した個性的なダイヤルには名工の高度な技が反映されています。腕に心地良くなじむシンプルなケース造形など、セイコーの時計づくりの歴史に基づく使い心地とクラシカルな味わいを大切にしています。
日本の美 日本の奇
歌舞伎の語源は、傾(かぶ)く。見るものを楽しませようと、流行の最先端を行く斬新かつ奇抜な扮装で舞い踊ったことから、こう呼ばれるようになったそうです。
セイコーは、日本の伝統工芸を取り入れた美しいダイヤルの腕時計を製造する一方、アバンギャルドなルックスのモデルもリリースしてきました。その根底にあるのは、日本らしい美意識であり、傾(かぶ)いたセンス。たとえば2009年にセイコーが初めて全世界の高級時計市場に向けて同時発売した「セイコー ブライツ アナンタ」では日本刀をデザインコンセプトに、独自のスプリングドライブムーブメントを載せた、これぞ日本でしか作り得ない美麗なクロノグラフのスタイルで存在感を発揮しました。
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日本刀が
デザインコンセプト
2009年、セイコーは全世界の高級時計市場に向けて男性用の腕時計シリーズを初めて同時発売します。その「セイコー ブライツ アナンタ」がデザインコンセプトとしたのは、長い歴史の中で、武器として生まれながらも芸術の域にまで進化してきた日本刀。裏ぶたからかん足へと繋がる長くて美しい曲面はまさに日本刀の刃先のようで、ザラツ研磨による歪みのない鏡面と相まって、独特の研ぎ澄まされた雰囲気を醸成していました。
セイコー ブライツ アナンタ
デザインの随所に日本刀のイメージを投影しています。写真はクロノグラフ付きのスプリングドライブ、キャリバー5R86を搭載したモデル。
独立多眼式の「キネティック クロノグラフ」やバングル形状の「セイコー スペクトラム」でも、日本のオリジナリティとハイテクを融合。これらもクールジャパンな名作として世界中の時計ファンに語り継がれています。今後もセイコーは日本らしい感性で既存の概念にとらわれない時計を作り続けていきます。
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型破りな
独立多眼式
時刻表示ダイヤルとストップウオッチのダイヤルを完全に独立して配置する「独立多眼式」というスタイルを打ち出した「キネティック クロノグラフ」。腕時計本体の動きで自動的に発電および充電を行い、クオーツムーブメントを駆動させるセイコー独自の機構、キネティックで作られた最初のクロノグラフです。そのハイテク感をエッジの効いた近未来的デザインでわかりやすく表現したことで、話題を呼びました。
キネティック
クロノグラフ
針を瞬時に帰零させる機能や秒針の指示誤差を防ぐ機能、ムーブメントの潤滑油の揮発を防ぐ構造なども盛り込み、当時のセイコー クロノグラフとして最高峰と言える仕上がりでした。
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バングル形状の
ディスプレイ
グイッと大きく曲がった大型曲面ディスプレイは、当時、最先端の電子インク技術によって実現されました。従来の液晶ディスプレイと比べて格段にはっきりしたコントラストや広い視野角を持ち、なおかつ表示部分を曲げられる自由さも備えることなどに着目し、いち早くセイコーは斬新なバングルスタイルの腕時計をリリースしたのです。なおこの「セイコー スペクトラム」は2006年のジュネーブ時計グランプリ電子時計部門賞も受賞しています。
セイコー スペクトラム
マイクロカプセル型電子インクによる表示体を持った世界初の腕時計。グラフィックアートのような時刻表示も可能でした。全く新しいスタイルの未来型のリストウオッチとして絶賛されました。
ムーブメントを
知ると
もっと楽しい!
腕時計の心臓部であるムーブメントを自社開発・製造できるメーカーは世界でも、ごくわずか。セイコーはムーブメントの開発と製造を自社で行うマニュファクチュールであり、「メカニカル」「クオーツ」「スプリングドライブ」などのムーブメントの全てが自社製です。しかもどれも独自の高度な技術が満載。クオーツは1969年にセイコーが世界に先駆けて世に送り出したものであり、メカニカルとクオーツの長所を併せ持つ第3の機構「スプリングドライブ」も1999年にセイコーが作り出したものです。メカニカルも含めて、独自の思想で精度・機能とも磨き抜いています。
ここではそうしたセイコームーブメントの代表作を紹介。“中身”について深く知れば、セイコーの腕時計を手にしたときの愛着も一層増すことでしょう。
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ソーラー電波
光エネルギーを動力としつつ、電波を受信し正確な時刻に自動修正するソーラー電波時計。10万年に1秒という高精度を実現し、2099年までのフルオートカレンダー機能を搭載しています。
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GPSソーラー
光エネルギーを動力としつつ、地球の20,000km上空を周回するGPS衛星の信号を獲得することで、地球上のどこにいても緯度・経度・高度を特定し、全世界のタイムゾーンに対応してすばやく正確な時刻を表示します。
海を越えて愛される
SEIKOコレクション
こんな個性的なモデル、見たことない!と驚かれる人もいるかもしれません。これらはセイコーが主に海外に向けて展開したもの。すでにさまざまなデザインバリエーションの腕時計をラインアップに加えていたセイコーですが、さらなるステージアップを狙い、先進的な機構をスタイリングによってアピールする、幅広いデザインのモデルを多彩にリリースしていました。
モータースポーツやマリンスポーツのファンに向けてビビッドなカラーを多用したスポーツウオッチや、クラシックをベースにモダンな機能美を表現したカレンダーモデル、そして世界的な時計デザイナーが手掛けた近未来的デザインのモデルなど、今見ても新鮮に映ります。こうした挑戦によりセイコーの開発力はさらに高まり、ファン層もぐっと拡大していったのです。
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Sportura
モータースポーツの
コアなファンに向けてセイコーが得意とするスポーティーな機能性を、ルックスの面からも強くアピールした「Spotura」。F1を筆頭とするモータースポーツの主なファンをおもなターゲットとしたシリーズです。“All-star Chronograph”をコンセプトに、先進的でテクニカルな外装をミックスさせたクロノグラフがコレクションの中心。スピード感や高機能、タフネスなどの要素を体現したデザインが受け入れられ、人気を博しました。
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Seiko Premier
クラシカルモダンな
新時代のドレスウオッチクラシックなデザイン要素をモダンな感性で表現した「Seiko Premier」。個性を重視するドレスウオッチの愛好者に向けたシリーズです。“Classic Inspiration. Modern Expression”をテーマとし、ドレスウオッチの伝統を踏まえつつ、モダンに進化させたデザインが最大の特徴。その代表的なモデルが写真のキネティック パーペチュアルです。ビッグデイトや多彩なカレンダーデザインが好評を博しました。
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Arctura
先進ムーブメントに
ふさわしい未来派デザイン「Arctura」は、セイコー独自の発電クオーツムーブメント「キネティック」の先進性を、象徴的にアピールしたシリーズです。“The Signature of KINETIC”をコンセプトに、エルゴノミックかつ未来的な造形美を放つデザインが特徴でした。写真のモデルは1999年にリリースしたモデル。
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Velatura
パワフルなルックスを
アクティブな人々へスポーツウオッチの潜在的ニーズの開拓を目的とした「Velatura」。セーリングやクルージングなどのマリンスポーツを愛好するアクティブな層をターゲットに据えたシリーズです。特に話題を呼んだのが10気圧防水仕様の「キネティック ダイレクトドライブ」。9時位置に配したカラフルなパワーリザーブインジケーターが目を引くデザインです。
デザインの力
腕時計は時を示す道具であるのと同時に、その人のこだわりやセンス、生き方などを雄弁に物語る重要なアイテムです。視認性や装着性、堅牢性や操作性といった本質に加えて、着けているだけで気分が高揚するような優れたデザイン性を備えているべきだとセイコーは昔から考えています。その中で、たびたび外部の一流デザイナーやアーティストとコラボレーションを行ってきました。そうした中には、自動車デザイン界の巨匠、ジョルジェット・ジウジアーロ氏率いる「ジウジアーロ・デザイン」とのコラボレーションのように、今なお時計ファンから愛される作品も数多く存在します。
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ジウジアーロ氏との
共同製作
GIUGIARO
ジョルジェット・
ジウジアーロ
デザイナー/
GFG Style Chairman
1938年イタリア クネオ県 ガレッシオ市 生まれ。1968年にアルド・マントヴァーニとともにイタルデザインを設立し、250以上の自動車をデザイン。1999年に「世紀のカーデザイナー」の称号を授与される。現在は息子ファブリジオ・ジウジアーロと2015年に設立したGFG Styleの会長として活動。
日本の皆様に
セイコーと私の初のコラボレーションは1983年の「スピードマスター」コレクションのデザインでした。「スピードマスター」コレクションの全てのモデルにおける共通点は、優れた実用性と何よりも人間工学を組み合わせたスポーティーなフィロソフィーを融合させることでした。美しさ、実用性、人間工学は、自動車から工業デザインのオブジェクトに至るまで、あらゆる分野のスタイルのプロセスにおいて常に私の焦点となります。私の仕事の本質は常に、形と実現可能性、人間工学、そして使いやすさをコラボレーションさせることです。大小の革新の集積の結果が、セイコーを世界の時計シーンの中で最先端の企業にしている所以なのです。
SEIKOブランド100周年おめでとうございます!
ジョルジェット・ジウジアーロ
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セイコー パワーデザイン
プロジェクト
また2001年からは外部デザイナーを招き、セイコー社員とともにブランドの未来を考えたワークショップ「セイコー パワーデザインプロジェクト」を展開。試作品は一般展示され、一部商品化もされました。その中には後年、日本デザイン振興会のグッドデザイン賞を受賞したモデルもあります。さらに、このプロジェクト自体も、2007年のグッドデザイン賞を受賞。2009年をもって一度は終了した本プロジェクトですが、2022年に復活し、新たな未来を提案しています。
新しいデザインを創出する実験的プロジェクト
「セイコー パワーデザイン プロジェクト」では、「大人の洗練(2003年)」、「魅了(2005年)」、「TOKYO(2008年)」など、年ごとに変わるテーマをもとに、セイコーの社員たちがプロトタイプを制作。そのうちいくつかは実際に商品化されました。
プロトタイプを展示し、未来を提案
「セイコー パワーデザイン プロジェクト」で開発されたプロトタイプは、展示会や各種メディアでお披露目され、多くのファンを獲得。セイコーの時計デザインの可能性を広げる機会となりました。