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“頂き”を目指し
セイコーのスポーツウオッチはここから始まった
セイコー初のスポーツウオッチというと、1965年に発表した国産初のダイバーズウオッチを思い浮かべる人が多いようです。実はそのルーツとも言えるモデルが存在します。それこそが1959年に誕生したフィールドウオッチ「ローレル アルピニスト」です。
日本にトレッキングや登山のブームが到来することを見越して開発されたモデルで、埃や砂が入り込まないようスクリューバックを備えるなど、当時としてはかなりタフな構造でした。時分針と全てのインデックスに夜光塗料を塗布し、かつ3時、6時、9時、12時位置を大きなくさび型インデックスとした視認性の高いレイアウトも特徴。ここでの機能追求の姿勢が、のちのダイバーズウオッチ、さらに「フィールドマスター」や「ランドマスター」の開発へとつながっていったのです。
2021年には初代モデルのデザインを忠実に受け継ぐモデルが登場。レガシーの雰囲気は今日でも味わえます。
ローレル
アルピニスト
1960年代のレジャーブーム到来に先駆けて発売。気密性の高いスクリューバック、昼夜を問わず高い視認性を発揮するダイヤルなど、実用性の高い腕時計として評価されました。
セイコー プロスペックス
1959 アルピニスト
復刻デザイン
セイコースポーツウオッチの原点であるローレル アルピニストのデザインを継承したモデル。もちろんプロスペックスの名にふさわしくスペック面は大幅に向上しています。
セイコーが保管するローレル アルピニストには、当時のタグがそのまま残っています。汗から時計を守る革製ウオッチパッドの裏には、SEIKO Alpinistと記されていました。
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アドベンチャーウオッチ
「ランドマスター」の挑戦
冒険家用のサバイバルウオッチとして1984年に発表した「フィールドマスター」。その精神を受け継ぎ、独自の機構A.G.S.(現キネティック)を搭載して1993年に誕生したのが「ランドマスター」です。
以来ランドマスターは、過酷な冒険に挑む冒険家・登山家たちの要望を満たしながら進化してきました。特徴であるワンピース構造ケースも、オールステンレスをはじめとして、チタンやセラミックスへと革新。高度や気圧傾向の計測を可能とした高性能圧力センサーの搭載など、高機能化も進めてきました。
冒険家のために極限の環境を想定して開発された腕時計ですが、発売以来、冒険家以外の方からも高い人気を博しているのは、この時計にロマンを感じる人が多いからかもしれません。
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ランドマスターの
30周年を記念
プロスペックス SBDX059
数多くの冒険家や登山家の信頼に応えてきたランドマスターの30周年記念限定モデル。歴代の代表的モデルのデザインを継承し、ケースは2代目から採用されてきた純チタンを使用。雫石高級時計工房で作られた高精度かつ堅牢なキャリバー8L35を搭載しています。
プロスペックス SBDX059
数多くの冒険家や登山家の信頼に応えてきたランドマスターの30周年記念限定モデル。歴代の代表的モデルのデザインを継承し、ケースは2代目から採用されてきた純チタンを使用。雫石高級時計工房で作られた高精度かつ堅牢なキャリバー8L35を搭載しています。
陸・海・空・宙
を制す
オールラウンド
への挑戦
どのような過酷な環境でも正確に時を伝える……。1965年に国産初のダイバーズウオッチを開発して以降、セイコーはそのような困難とも言える課題に挑戦し、高精度と屈強なスペックを兼ね備えたモデルを多彩なジャンルに投入していきます。もちろんその陰には、極限に挑むさまざまなジャンルのプロフェッショナルたちからの期待や切実な要望がありました。そのたびにセイコーは数々の技術的困難を乗り越え、彼らの命を賭けた仕事やミッション、冒険をサポートする高い性能や特殊な機能を備えた腕時計を送り出してきたのです。
そして気付けば深海から宇宙に至るまで、セイコーの腕時計はあらゆるフィールドにおいて輝かしい足跡を残すことに。これからも極限に挑む人たちの声に耳を傾けながら、私たちでしか作り得ない腕時計を開発し続けます。
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頑丈なケースを
楽しく表現
フィールドマスター
ユニットを組み替え可能な方式としたアウトドア用ヘビーデューティウオッチ。固定されたアナログ時計ユニットの6時側に、コンパスをはじめ、自由に計器をセットできました。
ユニットには、タイマー・アラーム機能のついた「デジタル時計」や、地図から実際の距離を算出する「マップメーター」もあり、行く先や目的に応じてカスタムできる時計として人気に。
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初のダイバーズは
イルカのアイコンとともに
1965 メカニカルダイバーズ
150m空気潜水用防水を実現した、日本初のダイバーズウオッチ。信頼性の高い自動巻ムーブメントを搭載し、1966年の南極地域観測隊に支給されたことでも有名です。
高水圧に耐えるため、りゅうず部分は二重パッキン構造。裏ぶたには防水性を表すイルカのマークが記されています。やがて1,000m防水に達するセイコーダイバーズの歴史がここからスタートしました。
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本格的な
パイロット用
ウオッチに挑戦
プロスペックス
スカイ プロフェッショナル
速度や燃料などの各種航法計算、単位換算など、飛行時に必要な各種計算を行える内転リング式航空計算尺を装備。そのほかストップウオッチなど多彩な機能を備えています。
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無重力でも
正確に動く
セイコー スペースウォーク
宇宙で使用するためにセイコーが開発設計した腕時計。販売に先立つ2008年に国際宇宙ステーションの乗組員に使用され、無重力空間でも正確に作動することが証明されました。
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1 ⁄ 1000秒に
挑み続ける
スポーツ計時の分野においても数々の革新を起こしてきたセイコー。その始まりはストップウオッチです。
1960年代まで公式競技に対応する高精度なストップウオッチは国内で開発されておらず、複数個で計測した場合は誤差が生じていました。その原因は計測員によるタイミングの違いと考えられていましたが、セイコーは内部の機構に起因することを突き止め、1962年にスタート・ストップ時にハートカムというパーツを用いるというアイデアで、誰が押しても誤差が出ない計時を実現したのです。
そして1964年の国際的なスポーツ大会に合わせて、1/100秒が計測できる画期的なモデルを開発。さらに各種スポーツ競技に即した多様なストップウオッチも生み出しました。その努力はやがて、 1/1000秒計測も可能な最先端のシステム開発へとつながっていくのです。
©AfloSport
フォトフィニッシュシステム
精密な計測を求め開発されたセイコーの「フォトフィニッシュシステム」。1秒で2,000枚もの極細写真を撮影し、その画像を繋ぎあわせて着順とタイムの判定を行います。
100分の1秒計測のストップウオッチ
1964年の国際的なスポーツ大会にも採用された、1/100秒計測を可能とするセイコー製のストップウオッチ。カヌーや自転車、ライフルなどの競技に使用されました。
1964年の競技別ストップウオッチ
競技の特性に合わせて、最適な積算計を備えたモデルを開発。ヨット競技用はカウントダウンタイマーを備えていました。
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世界最速の
“時”を刻んだ
セイコー
陸上競技の100m走において、トップクラスの選手は1秒に10m以上の速さで駆け抜けます。こうしたレースには1/1000秒の精度が要求されます。そこで、本格的なスポーツ競技の計時は、セイコーの「フォトフィニッシュシステム」に代表される、カメラで撮影した写真の画像からタイム判定を行う時代へ移行していきます。
写真は2009年、世界陸上競技選手権大会で使用されたトラックサイドクロック。1/100秒単位で最大59分59秒99まで表示可能です。セイコーは現在も各種競技の国際大会において、最先端の技術を駆使して高精度な計時・計測を行なっています。
2009年の世界陸上競技選手権大会と言えば、100m走における世界新記録樹立。当時の世界最速「9.58秒」を表示した機器こそ、セイコーのトラックサイドクロックでした。
山縣亮太の9.95秒を記録
2016年のリオ五輪では4×100mリレーで銀メダル獲得。2021年の国内大会100m走にて日本新記録となる9.95秒をマークした山縣選手。
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日本最速の
アスリートを支援
1964年の国際的なスポーツ大会を機に、 計時という形で陸上をはじめ、様々な競技にコミットしてきたセイコー。現在は積極的にアスリートへの支援にも乗りだしています。陸上選手の山縣亮太選手も、セイコーがサポートするアスリートの1人です。スランプやケガを乗り越え、2021年には不屈の精神により、「布勢スプリント2021」大会100m走において、ついに自身初の9秒台となる9秒95をマークして日本新記録を打ち立てました。
また、2018年には100m、200m走において日本記録保持者である福島千里選手がセイコーに入社。2022年の引退後もセイコースマイルアンバサダー(スポーツ担当)として次世代育成に貢献しています。
山縣亮太の9.95秒を記録
2016年のリオ五輪では4×100mリレーで銀メダル獲得。2021年の国内大会100m走にて日本新記録となる9.95秒をマークした山縣選手。
また、2018年には100m、200m走において日本記録保持者である福島千里選手がセイコーに入社。2022年の引退後もセイコースマイルアンバサダー(スポーツ担当)として次世代育成に貢献しています。
©Naoya Ochiai
セイコー
スマイルアンバサダー
(スポーツ担当)の
福島千里
女子100m、200m走の日本記録保持者。日本選手権の100mで2010年から2016年で7連覇を成し遂げるなど、輝かしい成績の持ち主である福島千里さん。
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スポーツ大会協賛と
オフィシャルタイマー
1960年代はじめ、セイコーは世界最高峰の国際的なスポーツ大会で計時・計測を行うための一連の機器を短期間で開発しました。競技ごとのルールを理解して設計・製造されたこれらの最新機器は、大会で大いに活躍。各競技連盟との間に深い信頼関係を構築するきっかけとなりました。
以後セイコーは陸上、水泳、柔道など数多くのスポーツ大会の協賛や公式計時を担うようになり、1985 年には世界陸上競技選手権大会を主催するワールドアスレティックス(World Athletics=旧 IAAF)とパートナーシップを締結。2011 年からは同連盟が主催し、世界陸上競技選手権大会および国際的スポーツ大会の日本代表選手選考大会に指定されるセイコーゴールデングランプリ陸上もスポンサード。アスリートの支援はもちろん、市民ランナーの応援など、スポーツを愛する方々を支えています。
©AfloSport
陸上
高精度な計時・計測でサポート
1964年に東京で開催された国際的スポーツ大会では、陸上競技用計時装置を含む1,278個の機器を開発。その精度の高さが評価され、以後、陸上競技と深い関わりを持つようになっていきます。
©AfloSport
大規模な陸上競技大会を支援
世界のトップアスリートが参加し、世界陸上競技選手権大会や国際的なスポーツ大会の日本代表選手を選考する選抜競技会にもなっている「セイコーゴールデングランプリ陸上」。この大会の前身であるスーパー陸上から協賛し、オフィシャルタイマーも務めます。
©AfloSport
長きにわたって感動の瞬間を記録
1985年からワールドアスレティックス(旧 IAAF)とパートナーシップを締結。同連盟の主催大会の計時を担当し、世界陸上競技選手権大会も1987年の第2回ローマ大会以降、継続してオフィシャルタイマーを務め、数々の記録達成の瞬間を計時・計測しています。
©PHOTO KISHIMOTO
水泳
水泳用の最新計時システムを常に提供
日本水泳連盟唯一のオフィシャルタイマーとして、日本選手権水泳競技大会やジャパンオープンなど国内の伝統ある大会において常に最新の計時システムを提供。インターネット上で速報を配信するなど、熱戦の模様をリアルタイムで会場外の方々にも伝えています。
柔道
試合時間や抑え込み時間を正確に計測
日本発祥の柔道とも、1964年の国際大会以降、密接な関係を築いてきました。現在では全日本柔道連盟のオフィシャルサプライヤーとして、国内で開催される主要な大会に計時装置やスコア表示サービスを提供。試合の勝敗を左右する重要な役割を担っています。
マラソン
全てのマラソンランナーの思いに寄り添う
東京マラソンをはじめ、セイコーは国内外の各種大会のオフィシャルタイマーとしてさまざまな支援を行なっています。プロ・アマ問わず、全てのマラソンランナーを応援しています。
人に優しく、そして地球に優しく
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バリアフリーウオッチ
確かな精度や次代を牽引する独創的なテクノロジーの開発は、セイコーにとっても大切な仕事です。しかし腕時計を使う人々、そしてそれらを取り巻く自然環境に配慮することも、今を生きる企業には重要な責務です。セイコーでは障がいのある方に寄り添い、年齢や能力に関係なく、幅広い人々のニーズに応えるバリアフリーウオッチを作り続けています。
触読時計
原初のモデルは
ガラスのない懐中時計型
ダイヤルに施された凹凸や、針に直接触れて時刻を読み取る触読時計。セイコーでは1930年代から製造していました。当時はガラス風防を持たない懐中時計型が主流。
使いやすくておしゃれな
腕時計タイプ
最新モデルは腕時計型。6時側に設けた突起に指を掛けてふたをオープン。12、3、6、9時位置のインデックスや時分針もそれぞれ形状を変えるなど、判読しやすいデザインに。
音声デジタル時計
セイコー初の
音声デジタルウオッチ
ボタンを押すだけで音声が流れ、簡単に時刻がわかる音声時計。おもに視覚障害のある方にご使用いただいています。初代、2020年モデルともグッドデザイン賞を受賞。
スポーツシーンに
適した最新モデル
「ブラインドマラソンやウォーキングなどの運動を楽しむ方が多い」というリサーチ結果を受けて開発。シリコンバンドで装着性を向上させるなど、アクティブに進化しました。
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セイコーが進める
海洋保護
セイコーはより良い地球環境づくりを推進するエコ活動にも注力しています。森林資源の保護を目的とした各種書類の電子化にはじまり、気候変動への対策となる再生エネルギー作りへの貢献、そして海洋資源保護につながるゴミ削減プロジェクトへの支援など。かけがえのない地球と「時」を結びつけるサステナブルな取り組みもまた、セイコーの大きな使命と言えるのです。
海底のゴミを拾う活動など自然保護を幅広くサポート
世界最大のダイバー教育機関であるPADIは、海底に沈むゴミなどの廃棄物をダイバーの手で取り除く活動「Marine Debris Program」を実施。その理念に共感したセイコーは、プロスペックスの売上の一部を寄付し、海洋保護活動を継続的にバックアップしています。