コーヒー焙煎士として新たな道を切り開き、輝かしいセカンドキャリアを送る坂口憲二。俳優としての仕事も再始動させ、そのライフスタイルに注目が集まっている。セイコーのデザイナーとしてプロスペックスの開発に携わる木村正幸も、学生のころからサーフィンを趣味としていることもあって、坂口の価値観やライフスタイルに注目しているひとり。
「Keep Going Forward」をブランドフィロソフィーとするプロスペックスは、豊かな時を紡ぎ出すための時計。揺るがない価値観を持って生きることが日々の生活を豊かにし、人生を実りあるものとしてくれるのだ。
感じてもらう。そこに答えがある
ーー長年プロスペックスを愛用している坂口。特にレトロモダンなデザインに惹かれているという。
木村:セイコーは1965年に国産初のダイバーズウオッチを発表しました。また1968年には、当時の世界最高水準のハイビートムーブメントを搭載したダイバーズウオッチも発表しています。この偉大な先達たちのデザインやスタイルを受け継ぎながら、現代的なアップデートを加えていったものが、“ヘリテージ”モデルです。当時に比べるとムーブメントの性能は格段に進化していますし、素材の品質も上がりました。またサイズに関しては時代性を意識しながらデザインしています。
坂口:しかし、昔から愛されてきたスタイルは変えずに、新しい時計をデザインするのはかなり難しいことじゃないですか?
木村:ダイバーズウオッチといいつつも、現代の潜水士がこの時計を使う場面は少ないでしょう。むしろ日常使いできるタフな時計として考えると、もうちょっとドレス感がある方がいいという声もある。そこでオリジナルモデルが持っている良さも生かしながらも、現代のニーズに合わせた要素を盛り込んでいます。
坂口:たしかにダイバーズウオッチには道具っぽい印象がありますが、プロスペックスは洗練されたムードを感じます。
木村:「SBEN007」の場合、少しでも薄く見えるように、例えばケースサイドに斜面を作りました。また逆回転防止ベゼルの傾斜もなだらかにして薄く見せるようにしています。装飾性という意味では、ベゼルサイドの刻みを大きくすることでキラッと輝くようにしました。ブレスレットの駒も少し角を落として肌あたりをよくしており、コマの一部にはポリッシュ仕上げをしています。
坂口:やりすぎると、歴史あるデザインが損なわれてしまう。何をどのようにブラッシュアップしていくかってことですね。僕も自分の会社で商品開発もしているので、デザインの重要性や大切さも少しはわかるようになりました。しかし時計は歴史も長く、デザイン案はほとんど出尽くしているでしょう。しかもプロスペックスは機能も重要ですし、歴史もある。かなり制限されていますよね。
木村:大切なのは組み合わせです。どういう要素を加え、何を減らすのか。そしてユーザーには何が一番刺さるか。引っかかりを与えられるかっていうところを想像しながらデザインします。しかしプロスペックスは歴史あるブランドなので、何を変えたのか明確になってもいけない。こういう商品ですと言葉を重ねなくても、ユーザーが勝手に時計の個性を想像してくれるデザインこそが理想です。
坂口:僕らも最初から「これはこういうコーヒーです」という説明はしないようにしています。まずは飲んでもらって、感じてくださいって。最初にあれこれ説明してしまうと、どうしても先入観ができてしまう。それは面白くないですよね。捉え方は人それぞれでいいし、自由に楽しんでほしい。説明が多いと、自分で考える感性が失われてしまうかもしれない。それじゃ面白くないですから。
ブラックダイヤルは視認性を高めるダイバーズウオッチの定番。「ダイバーズウオッチの王道的デザイン。ケースのボリューム感も好みです(坂口)」。セイコー プロスペックス メカニカルダイバーズ 1965 ヘリテージ 「SBDC197」セイコーグローバルブランドコアショップ専用モデル。自動巻、SSケース、300m空気潜水用防水、ケース径40㎜、ケース厚13㎜。製品の詳細はこちら ≫
1965年製ダイバーズのデザインを継承。「歴史あるデザインの中で細部をアップデートすることで、ドレッシーな雰囲気も加えた、セイコーのダイバーズウオッチのフラッグシップモデルです(木村)」。セイコー プロスペックス マリンマスター メカニカルダイバーズ 1965 ヘリテージ「SBEN007」セイコーウオッチサロン専用モデル。自動巻、SSケース、200m空気潜水用防水、ケース径39.5㎜、ケース厚12.3㎜。製品の詳細はこちら ≫
坂口が愛する千葉のサーフスポットにて。海を愛する者、会話が弾む。
坂口憲二(さかぐち・けんじ):1975年東京都出身。モデル、俳優を経て、2018年にコーヒーブランド「The Rising Sun Coffee」を立ち上げる。現在は千葉、東京、神奈川に店舗を構え、またコーヒー豆の販売や卸し、グッズ製作など幅広くビジネスを展開中。昨年から俳優の仕事を再始動し、ドラマやCMへの出演を増やしている。
木村正幸(きむら・まさゆき):1971年神奈川県出身。精工舎(現セイコータイムクリエーション)、デザイン事務所を経て、1996年セイコー電子工業(現セイコーインスツル)に入社。現セイコーウオッチ所属。スペシャリスト(社内資格)としてプロスペックスブランドを中心としたデザインを手掛ける。趣味はウインドサーフィン。
変えていくべきもの。
変えてはいけないもの。
木村:今回は焙煎所を見学させていただきありがとうございます。ここに籠ってあれこれ考えながら作業している時間は、きっと至福の時間なのでしょうね。
坂口:結局、それが好きなんですよね。新しい焙煎所は、元々取り壊す予定だった工場を改装したもので、焙煎機は2台入れています。まだまだスペースがあるので、ゆっくり座ってコーヒーを楽しめる場所も作りたいですね。会社の規模も大きくなり、スタッフも増えていますから、働きやすい環境をつくるのも僕の役割だと思っています。スタッフはみんなコーヒー好き。それだけでも十分ですが、チーム作りで意識しているのは、色々なタイプの人材を集めるようにすること。この分野だったら彼、このプロジェクトは彼女というように、長所を伸ばすように仕事を割り振れるといいですね。
木村:時計作りもチームです。新しい時計を世に送り出すために多くの人が関わっていますし、担当するデザイナーもひとりじゃない。例えば「SBEN007」は私がデザインを担当したのに対し、「SBDC197」はチームでデザインを進める必要があったので、チームの運営についてもいろいろ模索しました。デザインは個々の美意識と深く結びついていますが、それを同じベクトルにまとめなきゃいけない。プロスペックスには、1965年や1968年に生まれた歴史的モデルから、連綿と受け継がれる伝統がある。現在は私がスペシャリストとしてチームメンバーを牽引していますが、一貫したアプローチができるように、それぞれに異なる美意識や感性を同じ方向にまとめていくことが、難しさでもあり楽しさでもあります。
坂口:プロスペックスの愛用者として感じるのは、汎用性の高さですね。その日のファッションや仕事の内容に合わせても選べますし、芸能の仕事をする際には所有している時計を全部持っていき、現場のスタッフとどの時計をつけるかを相談することもあります。それはプロスペックスに一貫したスタイルがあるからなのか、自分のライフスタイルに凄く合っている。同じサーファーである木村さんが手掛けたからなのかな?
木村:学生時代はサーフィンに熱中し、今はウインドサーフィンを趣味にしているのは、休日に業務からどれだけ離れられるかを大切にしているからです。仕事はデザイナーで、休日は美術館を巡っていますだと、どうしてもインプットが偏ってしまう。むしろ私は異なる分野にこそ、デザインのヒントがあると思っています。
坂口:バランスですよね。働いてばかりも駄目だし、遊んでばかりも駄目。例えばサーフィンひとつとっても、海上にいる時だけを指すのではなく、ボードを車に積んで、運転して、波見て、着替えて……っていう一連のすべてが“サーフィン”だと思っている。そういう時間を、自分なりにどう楽しむかが大切。若い時は余裕もなく、用事を詰め込めるだけ詰め込んでいましたが、今は意識的に“無駄を楽しむ時間”を作るようにしています。そうするとよいメンタルを保てるし、仕事に関するアイデアも浮かぶ。手間をかけて自分が楽しいと思える時間を追求することって、贅沢ですよね。
新しい焙煎所では、コーヒーのいい匂いが広がる。ここから新しいコーヒーカルチャーを広げていきたいと、坂口は考える。
自分に嘘をつかずに
モノづくりに向き合う。
そこに答えがある。
木村:私はデザイナーですが、ひとりのユーザーでもあります。だから自分で欲しいと思える時計をつくりたいという気持ちもありますし、自分が一番美しいと思うラインをデザインの中に取り入れたい。そうじゃないと私がデザインする意味がなくなってしまいますから。しかしその一方で、その人の色が出すぎてもいけない。どんな役でも演じられる役者さんのように、デザインができるのが理想ですね。それでいて「実は、これも木村がデザインしたんだよ」と言われるのが理想です。
坂口:ブレンドコーヒーには無限の組み合わせがあります。そして俳優もデザインも同様。僕らって、基本的に答えがないものを追いかけている。しかし答えがないからこそ、自分の価値観を信じて進んでいくしかない。試行錯誤していく過程の中で、ひょんなことからアイデアが出ることもあるし、失敗してもヒントになることもある。それこそが物を作ったりデザインしたり、表現することの醍醐味ですよね。
木村:自分らしさを常に意識しながら、物を作っていきたい。そうじゃないと仕事自体も楽しくないですし、情熱のないものを生み出したくはない。プロスペックスは外で使ってこそ、その真価がわかります。風防に映り込んだ風景も含めてデザインだと思いますし、充実したライフスタイルの中で映える時計であってほしい。正解のない仕事だからこそ、自己満足を押し付けるのではなく、その理由をきちんと提示しながらデザインしていきたいですね。
坂口:自分に嘘をつかないこと。それが一番大事なことですよね。コーヒーに詳しいことも、味にうるさいことも大切ですが、結局は自分に誠実であることがすべて。それは僕自身のぶれない価値観にもなっています。時計も同じですよね。結局は人間が作っているものだから、そこには情熱がしっかり宿っているし、誠実に作られたものだから安心して使うことができる。実際にプロスペックスをデザインした木村さんに話を聞いて、より深くそれを実感しました。
ーー流れる時間は、誰にとっても等しい。だからこそ時間をどう楽しむか。それが人生を豊かにするヒントとなる。真摯に作られたプロスペックスの時計は、どう生きるべきかを示す指標となるのだ。
「このきれいなブルーダイヤルに惹かれます。どこか海っぽい感じもしますよね(坂口)」。セイコー プロスペックス マリンマスター メカニカルダイバーズ 1965 ヘリテージ「SBEN007」セイコーウオッチサロン専用モデル。自動巻、SSケース、200m空気潜水用防水、ケース径39.5㎜、ケース厚12.3㎜。製品の詳細はこちら ≫
本記事で紹介したモデル
<セイコー プロスペックス マリンマスター
メカニカルダイバーズ 1965 ヘリテージ >
<セイコー プロスペックス
メカニカルダイバーズ 1965
ヘリテージ>
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SBDC195
176,000円(税込)
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SBDC197
176,000円(税込)
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SBDC199
203,500円(税込)
SEIKO ブランド 100周年
スペシャルエディション
いずれもセイコーグローバルブランドコアショップ専用モデル