【24時針（GMT針）】

「12時間で1回転する時針のほかに、白夜や極夜などの起こる極地での午前午後の判別をしやすくするため、24時間で1回転する24時針をつけて欲しい」。大場氏のもう一つの要望をもとに開発した24時針は、24時間で1周するので、極夜や白夜といった現象が起こる極地付近で、午前と午後の区別が付きやすくなる。また、北半球では24時針を太陽に向けるだけで、即座に24時の方向が北だと分かる。「極地では北上する際や南下に伴って偏角は変わるので、現在位置の偏角を100万分の1の航空地図に示されている偏角線で確認し、極点と何度ずれているのか知らなければならないためコンパスを頼りに歩くのは難しい」と大場氏が話していたように、この機構は、冒険家にとって、正確な時間と方角を示す有意義なデバイスになった。

【数量限定1877本】

大場氏が、北極海単独徒歩横断で踏破した距離は1877km。これにちなんで、ランドマスター・トランスポーラー・アドベンチャーは、数量限定1877本で発売された。発売から10年以上経った今もなお、冒険家たちの間では、「大場モデル」や「北極モデル」として親しまれ、絶大な人気を誇っている。

【北極の地図をデザインしたダイヤル】

鮮やかなブルーダイヤルは、大場氏が人類史上初の単独徒歩横断を成し遂げた北極圏の地図を意匠に取り入れている。

【Kinetic】

定期的な電池交換不要の自動巻機構発電クオーツとして1993年にデビューした「AGS」は、この年をもって、機構名を「Kinetic（キネティック）」に変更した。

【“計測”という名の高機能化】

サミッターは、高度や気圧をはじめ、水深や温度、方位など、登山家や冒険家にとって必須となる情報を計測するためのセンサーを備えている。温度センサーや磁気センサーなど、数あるセンサーの中でも、最も多用されているのが、防水パッキンを介してオール純チタンケースに装着されている高性能圧力センサー。計測された気圧は、高度に換算してアナログ表示される。

登山家用マスターピースが取得したパテントの数々

高峰登頂の過酷な環境下において、優れた性能を発揮するランドマスター サミッター。この開発によって、セイコーエプソンは数多くのパテントを取得した。主なパテントは、以下の通り。

圧力センサーつき電子時計（特許 第2150517号）

圧力入穴をケースと圧力センサーに備えることで、ムーブメントのパーツによる圧力センサーのバックアップを可能にした。

水深計つき携帯機器（特許 第2959005号）

ケースの圧力導入孔に対して、圧力センサーユニットの一部、あるいはその全てのサイズは大きい。そのため、飽和潜水のヘリウムガス環境下で使用した場合、内圧によって外側へ押す力が働いた圧力センサーユニットは、ケースとのすき間で外側に移動する。だが、それ以上の圧力がかかった場合は、ケースと圧力センサーユニットの上面が当たるため、移動せず、問題なく使用することができる。

センサーつき電子機器（特許 第2512825号）

センサーユニットの底部にあるセンサー導通ピンという2本のパーツが、センサー信号を処理する機器本体のバネに直接導通係合することによって、着脱を可能にした。

温度計つき電子機器（特許 第2537059号）

感温板に比べて熱伝導率の低い材料で構成した絶縁部材は、感温板と温度検出素子との距離を一定以上に保ちながら、温度検出素子の感温板側を除く周囲を覆っている。

センサーつき時計（特許 第3125620号）

ケースの外側にある外気にセンサーが直接触れることで、圧力の値をじかに検出できる。この構造によって、センサー検出部の測定精度を向上させた。

センサーつき電子時計（特許 第2600974号）

センサーを固定する導通部材と回路基板の電極の接触によって、導通する仕組み。

【セラミックスベゼル】

1993年の誕生から、ステンレス、チタンへと素材革新を遂げてきたランドマスターにとって、初の試みとなる超硬素材・セラミックスサーメットを採用し、24時間表示の回転ベゼルの堅牢性を高めることに成功した。

【南半球仕様Kineticムーブメント】

定期的な電池交換不要の画期的な自動巻発電時計としてデビューした「Kinetic」が、従来の北半球仕様から、南半球仕様へと未曾有の進化を遂げた。このムーブメントを搭載したモデルは、24時間針を逆進させ、南半球の太陽の動きに対応できる。

【南半球仕様24時針（GMT針）】

24時間で1周する24時針（GMT針）は、その特徴を活かして、午前と午後の表示に使われるが、方位磁石が狂う極地付近においては、その代わりとなって正確な方位を知るための不可欠なツールとなる。通常の北半球モデルとは逆の反時計回りに回転する南半球仕様の24時針（GMT針）は、南極を旅する冒険家に寄り添い、必要な時に正しい方位を示す心強い味方。

【南半球仕様コンパス】

簡易方位計としての役割を担う回転ベゼルの簡易コンパス。その要となる東西南北の方位表示も、E（東）はW（西）、N（北）はS（南）というように、北半球仕様とは逆の南半球仕様に改造。360度の方位も従来とは反転した表示になっている。

【オールセラミックス】

セラミックスのように極めて硬い素材は、従来、加工方法が限られていたため、精巧なディテールを備えたデザイン性の高い造形を具現化することは、不可能とされていた。それを可能にしたのが、セラミックスの粉末を用いて、複雑な形状の小型部品を高精度で成形するニアネットと呼ばれる製法。回転ベゼルとブレスレットの中駒には、ブラックカラーのジルコニアセラミックスを、ケースの胴本体とブレスレットの外駒にはシルバーカラーのセラミックスサーメットを配し、オールセラミックス化を遂げたヘビーデューティーウオッチが完成した。

【南極の地図をデザインしたダイヤル】

ホワイトカラーインデックスとのミニマルなコントラストが洗練された印象を与えるブラックダイヤルには、大場氏が単独徒歩横断を果たした南極大陸の地図がデザインされている。その上を逆進し続ける24時針の動きが、極地の旅を彷彿させる。

【6ヶ月間パワーリザーブ】

デビュー以来、新たな素材の採用や高機能化を図るなど、着実に進化を遂げてきたランドマスター。その発展と共に、ムーブメントの駆動時間もめざましく進歩した。ゆっくりとした腕の動きでも発電する高性能小型発電機を搭載した開発当初の「AGS」は、1回の充電で約75時間駆動していた。その後、約1週間の持続時間を実現したのち、フル充電時で約6ヶ月間のパワーリザーブを叶える「Kinetic」へと成長を遂げた。

【北極の地図と犬ぞりをデザインしたダイヤル】

グリーンランド3000km、北極圏12000km、北極点縦断6000km、さらにグリーンランド縦断を犬ぞりで単独走破し、世界を驚かせた植村氏。ダイヤルには、犬ぞりと疾走する同氏の姿を描いた絵と｢NAOMI UEMURA」の文字が、北極の地図を背景にデザインされている。

【スプリングドライブ】

スプリングドライブが、過酷な環境下で使用する時計にとって、最も理想的なムーブメントといえる理由は、主に3つある。まず、針の動きを制御する調速機構に、メカニカルウオッチに使われる「てんぷ」や「アンクル」に比べて衝撃に強い水晶振動子や、ICを採用していること。この機構によって、メカニカルウオッチと同様にぜんまいの力で駆動しながら、クオーツウオッチと同じく正確な時間を表示し続けることができる。次に、電池を使用していないこと。急激な温度変化が起こるエベレスト登山中にも、破損や不意の電池切れで止まる心配もない。また低温の環境においても、潤滑油の硬化で精度が落ちることなく駆動し続ける。

【12時位置のりゅうず】

登山中のロープなどの引っ掛かりを防ぎ、手首の動きを妨げないために、通常、3時位置にあるりゅうずは、12時位置に配置している。りゅうずの上面とケースサイドには、三浦氏が2013年5月に史上最高齢の80歳にして、エベレスト登頂を目指す一大プロジェクトとして立ち上がった「MIURA EVEREST 2013」を象徴するロゴマークが刻印されている。セイコーは、この登頂プロジェクトをオフィシャル・サプライヤーとして支援した。

【特殊構造のベゼル】

より軽く、堅牢で、突起物のないシンプルな形状。三浦氏が登山中に着用する時計に求めたこれらの要素を具現化したケースには、高所特有の気圧の変化に対応するため、特殊構造のスクリューベゼルを採用した。外気の気圧が下がった時にも、高い機密性を維持することができる。

【視認性に優れた太い針やインデックス】

エベレスト山頂の過酷な環境の中でも「時間が分かる」ことは、三浦氏の強い要望の一つ。登山中は、時刻と経過時間をひと目で把握する必要があり、その精度は死活問題に関わると言っても過言ではない。ダイヤルにはマットなブラックを、太く大ぶりな時・分針とインデックスにはホワイトカラーを配したコントラストを強調する配色で、視認性を格段に高めた仕様になっている。ホワイトカラーには、夜間や悪天候に見舞われた時でも、優れた視認性を発揮する蓄光塗料「ルミブライト」を標準品より厚く塗装することで、輝度を高めた。