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Your King Seiko #03

Brift H(ブリフトアッシュ)代表/長谷川 裕也

人生をともに歩む相棒だから、
使う人のために磨き上げる

独自のスタイルを貫くさまざまな方に、キングセイコーの魅力をお聞きするインタビュー企画の第3回目は「靴磨き家」として活躍する、Brift H(ブリフトアッシュ)代表の長谷川 裕也さんが登場します。人々の足元を輝かせる靴磨きの技術と、腕元を彩るキングセイコーとの共通点を、その活動を通して探ります。

写真:長谷川 裕也

長谷川 裕也Yuya Hasegawa

株式会社BOOT BLACK JAPAN代表取締役。2008年に南青山の骨董通りに世界初のカウンタースタイルの靴磨き店「Brift H」を創業。国内のみならず海外にも、そのパフォーマンスや技術の指導に赴く。2017年ロンドンで開催された第一回「世界靴磨き大会」優勝。現在は「靴磨き家」として靴磨きを芸術文化にするために幅広い活動をしている。著書に『靴磨きの本(亜紀書房)』『自分が変わる靴磨きの習慣(ポプラ社)』など。

世界初の「カウンタースタイル」を実現
靴磨き家として活動するきっかけは?

靴磨きの道を目指したのは、当時20歳くらい。必要な道具を揃えて東京の丸の内で路上からスタートしました。お客様と話をしながら10分くらいで靴をきれいにして、笑顔で帰って行かれる。さまざまな方と会話できて楽しいし、とてもいい仕事だと思いました。

技術はすべて自己流で、周囲の上手な靴磨き職人の方を見て研究しましたね。なかでも、とある方がすごく上手で、自分より早いしピカピカに磨き上げていて、何度見ても理由がわからない。だから頼み込んで一日だけそばで見させてもらったこともありました。

そうして都内を転々としながら靴磨きをしていったのですが、4年ほど経過して路上での営業は限界だと感じて「お店を出そう」と一念発起します。それが2008年くらいの話で、「Brift H(ブリフトアッシュ)」という店舗をオープンいたしました。

このお店では、靴磨きはカッコいい仕事だということを伝えたくて世界初の「カウンタースタイル」を実現しました。カウンターで立って靴磨きをする、というアイデアも実は路上で靴磨きをしていたときに生まれたものなのです。

昔、とあるお客様から靴磨きの際に「なんだかカッコ悪いな」と言われたことがありまして…。普段から服装などおしゃれには気を使っていたのですが、とてもショックでした。なぜそう感じたのか理由を聞いてみると「小さい椅子に座って靴を磨いているのが見た目によくない。お客と同じ目線で、たとえば同じテーブルの上でくつろぎながらできないの?」と言われました。

写真:長谷川 裕也

たしかにそういう発想はなかったので、衝撃を受けました。そこでずっと考えていたのがバーテンダーのような、お客様と対面で靴磨きができる「カウンタースタイル」なんです。これがやってみるとすごく好評で、お客様とのコミュニケーションもさらに取りやすくなりました。

何より、靴磨きという仕事をカッコいいと認めてもらえるようになりました。こうした靴磨き文化の発展のために、2018年からは「靴磨き選手権大会」というものを発起人として開催しています。

写真:長谷川 裕也

キングセイコーの印象と
好きなモデルは?

ファッションは昔から好きですが、とくに人の手がかかっている物がいいですね。いま着ているGジャンも職人さんがひとつひとつビンテージのミシンで縫っているのですが、1940年代にあるブランドが縫製していた方法と同じやり方を再現していて。まるで作品みたいなモノ作りが好きですね。

そういう意味では、キングセイコーも半世紀前からのストーリーが感じられていいですよね。いま着用している「SDKS017」は、シンプルでどんな服装にも合うから毎日着けられます。

写真:SDKS017 KING SEIKO

とくに仕事柄、腕元は目立つので腕時計はあまりしてこなかったのですが、キングセイコーは派手すぎず上質感があって靴磨きの格を上げてくれている気がします。ブレスレットもすごくカッコいい。

「SDKS017」はネイビーカラーのダイヤルですけど、光の角度によってはブラックにも見えるし表情が豊か。キングセイコーらしい12時位置のライターカットインデックスも特徴的ですし、最大に巻き上げたうえで、腕から外しても3日間動いてくれるムーブメントもとても便利だと感じています。

靴から考える
腕時計のコーディネートとは?

写真:長谷川 裕也

職業柄、靴からコーディネートを考えると思われやすいのですが、実はそうではなくて…。シャツやTシャツをベースに決めることが多いです。そのあとで、靴や腕時計といった小物などを選んでいきます。

もう靴に関しては五十足くらいありますし、その日の天気などに合わせて履くといった法則を決めているので、あまり悩むことはないです。服と腕時計の合わせ方については、そんなに腕時計を所有しているわけではないので、キングセイコーはフォーマルにもカジュアルにも合わせやすく重宝しています。

今回拝見した、新作となるサックスブルーの「SDKS027」とバーガンディの「SDKS031」もとてもいいですね。さわやかで清潔感ある「SDKS027」はまさに万能で、どんな格好にもあいそう。大人っぽくて艶のある「SDKS031」はブレスレットをレザーストラップに変えると、さらにドレッシーになってカッコいいです。

ケース径が36.1mmとダウンサイジングされたところも、なんだか収まりがよくて好きですね。このサイズ感でパワーリザーブ3日間なのも、さすがキングセイコーは使う人のことを考えているなと思います。

  • 写真:SDKS027 KING SEIKO

    「薄いブルーのダイヤルはすごく清潔感がありますね。光が当たる角度によっても色味が変わって楽しいですし、スーツでもカジュアルでも似合いそう。サイズ感もコロンと小さくて主張しすぎず身に着けやすいです」(長谷川)

  • 写真:SDKS031 KING SEIKO

    「これ、ひと目見て心を惹かれました。なんだかバーガンディって珍しい色合いですし、上品な赤色がまるでワインみたい。お酒が好きなので、これを着けてバーで飲んでみたい(笑)。個人的にはイチオシのモデルです。キングセイコーの専用レザーストラップであるXSL00919に付け替えて合わせるのもとてもいいです」(長谷川)

靴磨き家として思う
キングセイコーの魅力について

靴磨きは基本的に、お話を聞きながらクリーナーで汚れを落とし、要望に沿ったクリームを選んで塗り込みながら磨き上げていきます。ひとりひとり、どんな履き方をしているのか、どんな好みなのかを把握することが重要です。

お客様のイメージと違う色に仕上げてしまったかなと反省することもあります。色の違い、光らせ方などは表現がいろいろと可能なので、お客様に提案しながら反応を見ていきます。やはり新品みたいに靴が磨き上がったときの喜ぶ顔がうれしいですよね。

写真:靴磨き

そういう意味では、キングセイコーがとくに力を入れているアフターサービスも、靴磨きと似ているのではないでしょうか。ケースやブレスレットを磨き上げ、キラッと光らせるライトポリッシュは、まさしく靴磨き同様にリペアの楽しさがあると思います。

内装(ムーブメント)修理・オーバーホールとセットでライトポリッシュを行うキングセイコーのコンプリートサービスは使う人が安心して愛用できるようにする気持ちが感じられて、とても共感が持てますね。モノに対して愛着が持てるような、キングセイコーのフィロソフィーを体現している部分ではないでしょうか。

あと、靴磨き家として心がけているのは、流れ作業にしないことですね。お客様ひとりひとりの想いがあって持ち込んでくれるので、オンリーワンな靴になるよう想いを汲んで仕上げるようにしています。針やインデックスなど、本当に細かい部分までこだわったキングセイコーの精巧な作りを見ていると、きっと同じように着用する人のことを考えているんだと感じます。

写真:長谷川 裕也

キングセイコーと
自身のスタイルの共通点

僕はキングセイコーほどの歴史がありませんし、共通点というのもおこがましいのですが、靴磨き家としてその文化が上質な世界観を持てるように目指しています。今のままでは靴磨き文化は50年後、100年後になくなってしまうかもしれない。だから靴磨きそのものが精神性を高める「道」になるよう尽力していきたい。キングセイコーのように本質を追求するような文化を目指したいです。

そのためにも靴磨き文化を継承するべく次世代を育てていこうとしています。先に述べた「靴磨き選手権大会」も今年で5回目になりますし、参加される職人さんの数もどんどん増えてレベルが上がってきています。 スタンディングでの靴磨き技術を実際に見ていただければ、そのカッコよさを感じてもらえると思います。2024年11月9日、10日に大阪で行われる決勝戦はきっと盛り上がるので今から楽しみです。

靴も腕時計も、長い時間を一緒に過ごす相棒。人生をともに歩んでいけるような存在として大事にしていきたいです。