人生に寄り添う物語を
デザインする
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2015年入社/工芸工業デザイン学科卒
2023年入社/美術工芸学部デザイン科卒
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腕時計は人生とともにある
──プロダクトデザイン部の役割について教えてください。
A.Y. 私は以前から筆記具やスマホ、カメラなど、パーソナルなプロダクトのデザインに興味がありました。
Y.H. 身の回りの物、私物ですね。
A.Y. そうそう、それ。その中でも腕時計は、さまざまなデザインが共存できるところの幅広さが面白いと感じました。
Y.H. 私は長く使ってもらえるものをつくりたいと思いました。腕時計は他の工業製品と違って製品寿命が長く、機械式時計なら手入れをすればとても永く世代を超えて使われる例もあります。しかも、人生の節目に購入するもので、かつ毎日身に着けるものだから、その人ならではの物語性がある点に魅力を感じました。
A.Y. 大切な人からいただいたり、大学受験の時に親から買ってもらったり。私も今まで着けてきた腕時計は全部覚えています。人の想いが乗っかっているのが、腕時計の魅力という気がします。
Y.H. ロマンがありますよね。
A.Y. セイコーウオッチに入社したのは、そんな腕時計のビジネスを、国内だけでなく海外に展開している点に醍醐味を感じたからです。世界中の人に製品を使ってもらえるチャンスがあるのが素晴らしいと思いました。
Y.H. 私は伝統工芸の職人技に幼い頃から憧れていました。セイコーウオッチでは『プレザージュ』や『クレドール』『グランドセイコー』などで伝統工芸を用いたモデルを展開しており、私も携われたらと思って入社を決めました。
A.Y. Y.H.さんは今『プレザージュ』の担当だから、その希望がかなったんだね。
Y.H. はい、1年目から担当させていただき、嬉しかったです。
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腕時計のすべてをデザインする
──お仕事の内容を教えてください。
Y.H. プロダクトデザイン部は、その名の通り腕時計のデザインをする部署です。ケース造形からダイヤル、針、バンドに至るまで、すべてをデザインします。商品企画部と一緒にコンセプトを考えたり、設計部門の方に技術的な相談をしたりと、他部署との関わりも多いです。
A.Y. 私は4年目から『グランドセイコー』のデザインを担当しています。やはり自分のデザインしたものがカタチになって、お客さまに使っていただけるのはデザイナーとして最高の喜びです。電車の中で見かけることもありますよ。
Y.H. 1年目に新型のケースを担当させてもらったのは、嬉しかったです。全体のイメージと細部の造形を行ったり来たりしながら理想の形に仕上げていく作業はやりがいがありましたし、試作サンプルを見たときの達成感は忘れられません。今後、自分が担当したモデルが完成して店頭に並んだら、A.Y.さんと同じ感動が味わえるかと楽しみです。
A.Y. 待ち遠しいね。
Y.H. 私以上に両親が楽しみにしてくれています。発売されたらぜひ両親にプレゼントするつもりです。
A.Y. 私も自分がデザインした腕時計を両親にプレゼントしました。とても喜んでくれました。
Y.H. まさに腕時計って物語が宿りますよね。
A.Y. Y.H.さんが先ほど、製品寿命の長いことが腕時計の魅力って話したじゃないですか。実はその点は、デザイナーにとっての難しさでもあるのです。長く使っていただくには故障しづらい構造にしなくてはならないし、アフターサービスのことも考えなくてはなりません。特に設計部門の方とは、そのあたりの相談をすることが多いですね。
Y.H. 人の人生に寄り添う腕時計ならではの難しさですね。でも、そうした難しさは、デザインをする上での面白さにつながると思います。
A.Y. 同感です。いろんな制限があるから、面白いのですよ。例えば俳句って、五七五とか季語とか、厳しいルールがあるじゃないですか。それなのに何百年もの間、新しく、美しい句がつくられ続けているのです。ルールがあるからこそ俳句の素晴らしさが際立っているわけで、腕時計のデザインも俳句に通じるところがあります。
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1年目からチャレンジ
──仕事の上でのお2人の関係について教えてください。
A.Y. プロダクトデザイン部ではブランドごとに担当が分かれていますので、今までお話ししたようにY.H.さんが『プレザージュ』、私が『グランドセイコー』のデザインを担当しています。ブランドが違うので仕事上で直接関わることは多くはありませんが、アドバイスを送ることはよくありますよ。
Y.H. どちらも機械式ですし、共通する部分もあるのでいろいろと教えていただいています。
A.Y. 特に1年目は暗中模索というか、手探りだったんじゃない?
Y.H. ええ。腕時計に関する専門知識が何もないまま『プレザージュ』の担当になって、こんなに早くデザインに携われるのだという喜びの一方で、自分にできるのかしらという不安がありました。でも、先輩方はそれぞれの分野の専門家で、質問すればすぐに教えてくださるので心強いです。
A.Y. ソーラー系の時計ならこの人、バンドだったらあの人という感じで、ブランドに関係なく専門家に質問できる環境です。
Y.H. A.Y.さんには、グラデーションについて質問させていただきました。
A.Y. きれいな色のグラデーションを実現するために、製造工程にどのように指示すればいいか、アドバイスしました。『プレザージュ』と『グランドセイコー』はどちらも機械式で、製造では共通するポイントが多いから、Y.H.さんも私に質問されたのだと思います。何でも吸収しようとする積極的な姿勢を感じました。
Y.H. いろいろな人から知識やアイテムを吸収しながら成長するのは、RPGみたいだなって感じています。
A.Y. 将来についてはどんなビジョンを持ってる?
Y.H. 同じチームの先輩から言われた「今デザインしている時計は、お客さまにとって10年に一度の買い物かもしれないよ」という言葉が胸に残っています。誰かの人生に寄り添う腕時計をつくりたいという気持ちを大切に、メンズ・レディースの枠を越えて、誰もが憧れるような1本をデザインすることが目標です。
A.Y. 私は中堅と呼ばれる立場になり、お客さまをご招待して開催するイベントでプレゼンテーションする機会も増えました。これからも先輩たちが築き上げてきたSEIKOブランドの“信頼”や“誠実”といったイメージを大切に、誠実なものづくり、ブランドの啓蒙活動を行っていきたいです。
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私がセイコーウオッチに入社するきっかけにもなった『プレザージュ』。ぜひデザイナーとして携わってみたいと思っていたので、1年目から担当できて嬉しく思っています。もちろん入社してから自分のために買ったのも『プレザージュ』です。
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私が『グランドセイコー』を担当するようになってから、スポーツ系やドレス系とジャンルも広がりました。ブランドと一緒に自分も成長できたと感じています。これは銀座限定の『グランドセイコー』。製造本数が限られていたこともあって、大変話題になった1本です。